「田舎者」と笑われた私、実は裏社会の女帝でした ~冷徹社長に正体がバレて溺愛される~

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第86章 失せろ

立ちはだかったのは、橘沙羅だった。

事態の急転が受け入れられないのか、あるいは父や賓客の手前、何かを演じようとしているのか。彼女は気丈さを装い、白々しいほどの憂色を浮かべて橘凛を呼び止めた。

「お姉様、どこへ行くの? 話はまだ終わってないじゃない。その猫、さっき皆を驚かせたし、それに田中さんだって……」

橘凛の足が止まる。

ゆっくりと顔を上げると、澄み切った、だが絶対零度の冷気を宿した瞳が、氷の刃となって橘沙羅を射抜いた。

喧噪も争いも、今の彼女には遠い世界の出来事だ。認識するのは、目の前の障害物と、腕の中の救うべき命のみ。

血の気のない唇が開き、底冷えするような殺気を孕んだ言葉...

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